1. フィネス (finesse)①
1-1. フィネスの基礎概念
オークションが終わってプレイが始まり、オープニングリードが来てダミーが開かれます。一番楽なのは最初から勝てるウィナーが十分あることですね。例えば図1みたいな感じ。
図1. 3NT by SとなりWから♦がオープニングリードで来ます。ウィナーを数えると♠3、♥1、♦1、♣4とあり、これらを全部勝てば9勝でコントラクトは簡単にメイクしますね。
通称上から9個ある3NTってやつですね(笑)
ではこっちではいかがでしょう。さっきよく似ていますが若干違います。
図2. 3NT by Sとなます。Wから同様に♦がオープニングリードが来ます。絶対勝てるウィナーを数えると♠1、♥2、♦1、♣4となり、現状8個しかありません。しかも♦Aを勝つと♦はもう守れなくなっているので、次に負けた瞬間にEWに残ってる♦を全部負けてしまいます。
ですがコントラクトをあきらめるには早すぎます。♠Qが勝てるかもしれません。♠Aを取ったあとNから♠Qを出してみるプランにすると、確かにEかWが♠をK1枚しかもっていないときは♠AのタイミングでKが出てくるので♠Qも自動的に昇格して勝てるようになるでしょう。しかし、その確率は数%で極めて低いです。
では、Sから♠を出すとどうでしょうか?
もしWが♠Kを持っていたらどうなるか考えてみましょう。
Sの♠に対し、WがKを出して来たらAを勝って、Qも勝てるようになりますね。ということは当初のプランより♠が1勝増えるのでコントラクトはメイクします。
また、WがK以外を出したら今度はQを出せばこれ勝てますよね。したがってコントラクトはやっぱりメイクです。これがフィネスです。
ここで、「え、じゃあEが♠K持ってたらどうすんの?」って思うかもしれません。たしかにEが持っていたらQ出したらK出されて負けちゃいますね・・・。
はい・・・その通りですあきらめてください。
まとめると、フィネスは特定のカードが都合のいいほうにいる(今回は♠KがQの手前にいる)ことにかけて、50%の確率でトリックを増やすプレイです。この基本さえわかってしまえばこれからかなりのトリックを増やすことができるでしょう!!!
実はフィネスをやるときには2つ注意点があります。
一つ目はフィネスがいいプレイなのかということ、通常のフィネスは確率50%です。ようするに確率60%のフィネスしないプレイがあればそっちを採用するほうがいいということ。この辺はまた後で触れましょう。
二つ目は本当にフィネスができるのかということ。フィネスは対岸からカードをリードしないといけません。今回の場合は♠をSから引かないといけないんです。そのためにはSへのエントリーが必要です。Sで勝てるカードが1枚もないとそのフィネスは現実にはできないものになってしまいます。
P.S. もしEがKシングルトンの時だけは、Aを出してからQを出せばコントラクトはメイクし、フィネスを敢行するとコントラクトはダウンします。ブリッジでは確率の悪いプレイのほうが瞬間的にはいい結果になることもあるんですねえ。もちろん長い目でみればそんなことはないんですが。ここまで確率が違うとフィネス以外のプレイが選ばれることは少ないですが、競技会だと微妙に確率がいいことをしたのに裏目ったという話はあちこちで聞かれます(笑)。
1-2. いろんな種類のフィネス(その1)
実はフィネスにはいろんな種類があります。試合に出たら確実に出てくるものからめったに出てこないものまで、いろいろ見ていきましょう。
種類自体は多いように見えますし、実際のプレーではいろんなバリエーションがありますが、基本的な概念は同じです。日本代表を目指すぐらいのレベルになったら細かい確率の違いは大事ですが、ほんとはそんな小難しく書くようなことではありません(笑)
A. ダイレクトフィネス (direct finesse)(出現度★★★★★)
N側:AQ
S側:xx
さっき例でもでてきた。一番普通のフィネスです。Sからxを引き(xというのは勝つことがない小さいカードのことです。2でも3でも4でもあんま変わらないのでこういう風に書かれます)W側がKを持っていれば2勝できます。当たり前ですが、もしこのスートのAがすでにプレイされていたらN側がKJでも同じ話になりますね。
(注意点)S側へのエントリーが必要。
B. インダイレクトフィネス (indirect finesse)(出現度★★★★★)
N側:Kx
S側:xx
さっきの例とよく似ていますが、AはEWサイドにあります。でも基本的にやることは同じです。Sからxを引き、WがAを出さなかったらNでKを、出したらNでxを引くことでKは次のタイミングで勝つことができます。。
(注意点)S側へのエントリーが必要。Aには負けてしまうので、もうあと1回も負けられない状態になってしまったらこのプレイはできない。
C. ダブルフィネス (double finesse)(出現度★★★★)
N側:AQT
S側:xxx
今度は同じスートで2回フィネスが入るダブルフィネスです。やっぱり基本的にやることは同じです。Sからxを引き、Wがxを出したらTを、Jを出したらQを、Kを出したらAを引きます。
例えば、NのTがEのJにつかまったらその後再び勝ってSに入ったときにはさっき説明したダイレクトフィネスの形になっています。NのTがEのKにつかまったら(WにJ、EにKがあるパターンですね)NのAQは何もせずとも勝つことができます。
算数が得意だとすぐわかりますが、25%で3勝(EがKJ両方持っているとき)50%で2勝(Eがどちらか1枚持っているとき)25%で1勝です。
[余裕のある人向け](かなり難しい話ですが、一回目のフィネスでEがxを出したらQを引くプレイもあり、それでもこのスートでの確率はほぼ変わりません。QがKにまけたらJをWにマークしてTをフィネスするだけなので。どちらがいいプレイかはほかのスートとの兼ね合いや、EWどっちのほうがKもってそうかなどの状況判断によることが多いです。)
(注意点)S側へのエントリーが2回必要。
N側:AJT
S側:xxx
これもダブルフィネスの例です。要するに2枚以上をまとめてフィネスする形ですね。
今回は75%で2勝、25%で1勝の形です。
D. トリプルフィネス (triple finesse)(出現度★)
N側:AT98
S側:xxx
AQT8なども同様ですね。こんな感じで3枚まとめてフィネスするのがトリプルフィネスです。ごくまれに出てきます。
(注意点)S側へのエントリーが3回必要。そもそもフィネスがいいプレイなのかは怪しいことも多い。
E. ディープフィネス (deep finesse)(出現度★★)
N側:AKT
S側:xxx
もうここまで読んで慣れてきたならわかるかもしれません。QJをターゲットにフィネスします。Tの上のQJ2枚がEW側に、そのさらに上AK2枚がNS側にあるのでかなり深い位置のフィネスです。ちなみにこれもダブルフィネスと呼んでる人もいます。これは厳密には間違っている使い方なのかもしれませんが、正直名前はどうでもいいです。
WがQJ両方持っている25%で3勝です。
(注意点)S側へのエントリーが2回必要。1回目のxのときWがJを出してきたらNのKで勝って、再度Sに入ってフィネスする必要があるため。
[余裕のある人向け](WがもしQJを持っていて、Nがダミーで見えていたとしましょう。W目線ディープフィネスは効いています。ではSがxを出したときにはJ(orQ)を出すのとxを出すの、どっちがいいでしょうか?
これは状況によって違います。xを出すとS側は本当にフィネスしていいものなのか悩みます。成功率は25%、ほかにより良いプレイがあれば選びにくいでしょう。一方Jを出すとAで勝って次は50%のフィネスを敢行する権利があります。ではxがいい?本当にそうでしょうか。このディープフィネスが成功するのが一番確率が高いならSはディープフィネスをトライします。もしSへのエントリーがもうなかったら事件発生です。WはQかJを出しておけばコントラクトは落ちていました。本当は2度目のフィネスができなかったからです。Sのハンドがどこまで精度よく読めているかで出すべきカードは違うんですねえ。ちなみにこういう時負けるとわかっていながらつながっているカードの1枚を出すことをスプリットといいます。
F. ツーウェイフィネス (two-way finesse) (出現度★★★)
(
N側:AJx
S側:KTx
EW側にQがあります。Wにあると思うんだったらSからxを引き、JでQをフィネスが正解、逆にEにあると思うんだったらNからxを引き、TでQをフィネスが正解です。ではどっちがいいか?それは当てるしかありません。一般的にこういうフィネスはできるだけ後回しにして、それまでのビッドやプレイ状況から当てる確率を高めていくのが良いです。
当てれば3勝、外せば2勝です。
(注意点)できるだけ後回しにしたほうがいい。